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正しい恋愛のススメ

 先日、TBS系の愛の劇場で放送されていたドラマ「正しい恋愛のススメ」が最終回を迎えた。いわゆる昼ドラを見るのは、3年ぶりぐらいになるかもしれない。その頃はビデオ録画だったが、今ではHDD録画でとても快適だ。

 それはともかく、全30話(6週間)とそれほど長い作品ではなったが、30分の中で毎回何らかの展開があり、飽きることなく楽しめた。一条ゆかりの漫画が原作で、原作ファンにはあまり評判が良くないようだが、ストーリー自体がとても面白いので、原作を知らない私にとっては、毎回観るのが楽しみだった。

 このドラマに限らず、ある作品が映像化される際、原作ファンがキャストに納得出来る場合というのは稀有なように思う。小説であれば、読者の中でイメージが出来上がっているし、漫画であればイラストのイメージがあるので、キャストの人選というのは非常に難しいだろう。

 本作の場合、原作を読んでいない私としては、キャストに違和感を感じることはなかった。岬玲子役の大島さと子がそんなに魅力的なのかという疑問はあるが、男っぽい部分を内包した脚本家の役をしっかりと演じていたと思う。また、竹田博明役のウエンツ瑛士の演技に関しては、あまりに棒読みすぎてなんとも評価しがたいが、バラエティで鍛えた成果なのか、コミカルな演技は悪くなかった。

 ただ、一番光っていたのは、玲子の親友であり、プロデューサーである木原順子役の木野花ではないだろうか。彼女のおかげで作品が引き締まっていたと思う。舞台女優だけあって、演技に揺らぎがなく、見ていて心地よかった。また、博明の母親、敦子役の岡本麗も味があって良かった。

 護国寺洸役の半田健人はタモリ倶楽部でのマニアックな言動で注目していたが、演技も悪くなかったと思う。その他、小泉美穂役の仲程仁美や原田一樹役の小木茂光らもそれぞれに魅力的であった。主役以上に脇役の魅力が大きかったと言える気がする。

 ストーリーも良く出来ていて、毎回ワクワクさせられた。ただ、最終回だけは肩透かしを食らったような気分である。原作もあのような終わり方なのだろうか。まあ、コメディーだから、暗い結末になるよりは良いかもしれないが。

 最後に関連記事として、読売新聞の記事を抜粋引用しておく。

 少女漫画界の女王・一条ゆかり原作の作品が、TBS系の昼帯ドラマを"独占"している。9月にスタートした「正しい恋愛のススメ」(月?金曜、後1・00)に続き、今週からは不朽の名作「デザイナー」(月?金曜、後1・30)が始まった。(津久井美奈)

 1968年にデビューした一条は、富豪の令嬢・子息6人組が活躍するコメディー「有閑倶楽部(くらぶ)」や、フランスの富豪の娘と幼なじみの悲恋を描いた「砂の城」など、華麗でゴージャスな作品で知られ、30?40代の主婦層に絶大な人気を誇る。現在は、声楽家をめざす女性2人の相克を描く「プライド」を女性漫画誌「コーラス」に連載中だ。

 74年に少女漫画誌「りぼん」に連載した「デザイナー」は、初期の代表作。ファッション界を舞台に、孤高のモデル・亜美(松本莉緒)と誇り高きトップデザイナー・鳳麗香(国生さゆり)がプライドをかけて闘い、やがて悲劇へと向かう愛憎劇。制作は毎日放送(大阪)で、脚本は「ごくせん」の松田裕子が手がける。

 一方の「正しい恋愛のススメ」(TBSなど制作)は、大人向け雑誌に活動の場を移した90年代のヒット作。離婚歴のある美貌(びぼう)の脚本家・玲子(大島さと子)と、その娘・美穂(仲程仁美)の恋人・博明(ウエンツ瑛士)との恋を通して、昨今の女性の恋愛観や人生観をコミカルに描いた作品だ。

 「2作の同時ドラマ化は偶然。『正しい恋愛のススメ』は、『プライド』のドラマ化の話をいただいた時、昼ドラマならばこちらが向くと私が薦めました。『デザイナー』は、脚本家の方もぜひにと言われたのでドラマ化になりましたが、なんで今さらと思いました」と一条は笑い、喜ぶ。

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『悪文―裏返し文章読本』中村明

悪文―裏返し文章読本

悪文―裏返し文章読本

中村明
ちくま新書 (1995/05/20)
693円(税込)

 作家の文体研究や文章表現研究などで著名な著者による文章読本。

 「裏返し文章読本」という副題の通り、悪文にスポットを当てているところが面白い。良い文章を書くために、良い文章を読むことは重要だが、同時に、悪文を知ることも必要だ。悪文とはどのようなもので、なぜ悪文になってしまうのかを理解していれば、自ずと良文・名文を書くことができる。また、悪文を見過ごしてしまう確率も減るだろう。

 その悪文について、様々な観点から説明されており、大変分かりやすい。だが、指導書というよりは読み物的な性質が強いので、実際に文章を書いていてどう直したら良いか分からない時に調べるというような使い方には向かないと思う。読み物として楽しみながら読むことで、文章を書く時の態度や注意点を身に付けられる本なのである。

 昨今、ブログが急激に普及し、誰もが文章を書き、それを発表できるようになった。そのような状況の中で、気軽に読めて、かつ実践的であり、なによりも「書く」ことに対する意識改革にも役立つ本書は、恰好の文章読本と言えるだろう。

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At 23:24 | コメント (0) | トラックバック (0) | 実用書系

「NEWS」内博貴、飲酒謹慎騒動のまとめ&復帰は?

 ジャニーズの人気グループ「NEWS」および「関ジャニ∞」のメンバーである内博貴が、フジテレビの菊間千乃アナらと飲酒し、補導されたのは3ヶ月前の7月15日のことであった。

 この一件に関しては、スポーツ紙や週刊誌などで大きく取り上げられ、ネット上でも話題となった。テレビでの報道は事務所の圧力ゆえか、ほとんど見られなかったが、他のメンバーが謝罪した際には多少取り上げられていたようだ。

 このブログでも複数回にわたり話題にしたが、その際の反響は、急激なアクセス数の増加やコメントの数からも分かるように、かなりのものであった。個人的な趣味性の強い書籍の感想を書いているときとは大違いで、ジャニーズに対する関心の高さが伺える。

 この飲酒補導騒動はその後も一定の関心を集めていたようだが、徐々に下火になり、最近では『週刊女性』に内への直撃インタビューが掲載されたぐらいではないだろうか。

 このように、だいぶ落ち着いてきたところで、ざっとまとめておこうと思う。まとめと言っても、以前書いたことを繰り返しても仕方ないので、以前の内容は以下のリンクから参照していただくこととし、今回は内博貴の復帰について考えてみたい。

ブログ内の関連記事

復帰への布石

 先日、内の飲酒の最大の原因とされた菊間アナのテレビ番組復帰が発表された。以前のレギュラーであった「こたえてちょーだい」はさすがに降板となる様子だが、とりあえず復帰は出来るようである。

 この発表こそ、内博貴復帰への布石と言って良いだろう。彼女が復帰するとなれば、当然、内も復帰させて良いという話になる。さらに言えば、どうして菊間アナが先に復帰するのかという批判的な意見も持ち上がるだろう。事実、ネット上でのファンの発言などを見ていると、菊間アナに対するバッシングが多い。

 この傾向は、ファンならずとも見られるものだろう。同じ事件に関わった二人がいて、両者の過失に大差がないのであれば、先に謹慎を解いた方に反発が起こり、もう一方に同情が寄せられるのは当然と言って良い。つまり、今回も菊間アナは一種のスケープゴートとして利用されたに等しいのである。

 なお、「今回も」と書いたのは、「菊間アナが個人的会合に、個人的に内を呼び出し、酒を飲ませ、泥酔させた」という報道が、「菊間=悪」という構図を作り、内への批判をかわすための情報操作であったのではないかと考えられたからである(詳細は2005/07/20の記事に)。

復帰の時期

 このように、彼は着実に復帰へ近づいていると言えよう。では、具体的にそれがいつ頃になるかというと難しい。

 しかし、「NEWS」から復帰か「関ジャニ∞」から復帰かを考えると、後者の可能性が高いように思う。補導された際の報道では「NEWS」のメンバーという形であり、「関ジャニ∞」という名前はあまり見られなかった。結果として、一般的には「NEWS」のメンバーということで認識され、「関ジャニ∞」のメンバーという印象は薄くなったように思われる。また、「関ジャニ∞」自体がそれほど一般に認知されていないことを考えても、まずは「関ジャニ∞」の方から復帰するのがスムーズであろう。

 それに、「関ジャニ∞」はメンバーが8人だから「∞(エイト)」なのであって、これ以上7人体制が続くのは不自然である。先日、ニューシングルが発売されたが、その前には新メンバーが入って8人となるというような報道もされたほどだ。だから、次のCDが発売される時には「関ジャニ∞」の内博貴として復帰するだろう。

 その時期がいつになるかは分からないが、年内の可能性は低いと思う。来年の前半ごろではないだろうか。そして、来年中には「NEWS」にも復帰し、ほぼ元通りの活動ができるようになるだろう。

復帰の可否

 今までの状況を考えれば復帰することは確実だと思う。しかし、復帰すべきではないという意見もあるに違いない。それは人それぞれの考え方であるから、特に否定はしないが、私自身はこの程度のスキャンダルで引退する必要はないと考えている。

 確かに、未成年の飲酒は法律上問題だ。だから、全く悪くないとはいえない。しかし、芸能界を見渡せば、覚せい剤の使用などで逮捕されたにもかかわらず、その後、平然と活動を行っている人たちがそこかしこにいる。彼らと比べるのが適切かは分からないが、まだ二十歳にもならない少年なのだから、間違いの一つや二つ犯すことだってあるだろう。

 彼らが間違いを犯した時に、周りの大人がすべきなのは、彼らを切り捨てることではなく、反省させ、後悔させたうえで、再度チャンスを与えることなのではないだろうか。もちろん、それを何度も繰り返すようなら救いようがないが、何らかの才能を認めてデビューさせたのだから、一度のミスで首を切るようなことはすべきではない。

 間違いを犯してしまった原因の一つには、芸能界という特殊な世界で仕事をしているということもあるのだろうから、彼らを立て直してあげるのも、芸能界に引き込んだ事務所が果たすべき責任である。

 ジャニーズ事務所は今まで、その責任を果たしてこなかった。何か問題を起こしたタレントがいれば、すぐに切り捨てるか、その問題をもみ消してしまうかのどちらかで、しっかりと教育していたとは考えられない。

 では、今回その責任を果たせたかといういうと、それも怪しい。なぜなら、内が復帰出来るのは(まだ確実ではないが)、彼の人気が高いからであり、すなわち商品価値が高い、稼げるタレントだからという商業的な要因が強く作用しているように考えられるからだ。

 かつて、同じ「NEWS」のメンバーであった森内貴寛がスキャンダルを起こした際には、あっけなく引退させてしまった。つまり、金のなる木は大切にし、それ以外はさっさと厄介払いするという傾向が抜けきれていない可能性が高いのだ。

 営利企業である以上仕方ないとは思うが、未成年を多く有しているのだから、もう少し違う考え方があっても良いと思う。今後は、タレント達のことをもっとよく考えた事務所になると良いのだが......。

At 23:20 | コメント (0) | トラックバック (0)

『キノの旅 ―the Beautiful World―』時雨沢恵一

キノの旅 ―the Beautiful World―

キノの旅 ―the Beautiful World―

時雨沢恵一
電撃文庫 (2000/07/25)
557円(税込)

 上遠野浩平のブギーポップシリーズと共に、電撃文庫、ひいてはライトノベルの代表的な作品となった人気作。

 人間キノと、言葉を話す二輪車エルメスによる旅の物語である。一つの国には三日間、そう決めて旅する二人(?)は、いろいろな国のいろいろな人々と出会う。それは楽しいことばかりではない。いや、むしろ、辛いことや悲しいことの方が多い。でも、キノは旅を続ける。止めるのはいつだってできるから。

 六話の短篇からなる本書は、良い意味で期待を裏切る作品である。アニメ化もされ、主に中高生に人気のある作品だという前情報から想像したのは、ファンタジー色が強く、スピード感があって、派手で明るくコミカルなアクションノベルであった。しかし、実際に読んでみると、その正反対であることを知り、驚いた。

 冷静でどことなく儚げなキノが訪れる国々は、どれも微妙に歪んでいる。一見ファンタジックとも受け取れるその歪みは、現実の社会に潜んでいる歪みを一方向に引き伸ばしただけのものだ。だから、実に現実的であり、同時に虚しさを感じさせる。どの国の物語も、皆一様に虚しい。楽しそうな国は登場しないのである。

 そんな国を旅するのだから、読んでいて楽しいというよりは、苦しい。そして寂しい。だけど、続きが読みたくなる。この力はどこにあるのだろうか。キノの力強い意思から湧き出ているのかもしれない。とにかく、不思議な味を持った小説であることは否定し得ない。

 ただ、全体的に単調になってしまっているのが残念である。上述したような傾向を持つ作品だから仕方ないのかもしれないが、もう少し起伏を持たせても良かったのではないかと思う。

 一方、構成についてはかなり綿密に考えられているようで、後半の展開に驚かされると共に、謎が生まれ、その謎に惹きつけられてしまった。その謎に関してはしっかりと伏線が張られているので、矛盾はないが、それゆえに謎が深まるという重層的な構造になっている。プロローグ、エピローグも上手く出来ていて良かった。

 ライトノベルと言っても、一般的な小説に匹敵する力を持っていることは多い。「ライト」であると自己定義することによって、型通りではない、冒険的な作品が生まれるのかもしれない。

At 01:09 | コメント (50) | トラックバック (0) | ライトノベル

『ママチャリ刑事I』小松江里子

ママチャリ刑事I

ママチャリ刑事I

小松江里子
光文社文庫 (1999/02/20)
460円(税込)

 バツイチ子持ちの女刑事、立花薫とその隣に住む専業主婦(夫が刑事)の小泉日向子。そんなふたりのママチャリコンビが活躍する短篇ユーモアミステリ。「呪いのゴミ箱!殺人カラス襲撃事件」など、全四話が収録されている。

 小松江里子といえば、人気脚本家の一人である。おそらく本作も、ドラマ作品なのであろう。そう思って、ページをめくると、「ノベライズ/豊田美加」と書かれている。これはどういうことだろう。奥付を見ても、「著者 小松江里子」となっているのだが......。普通、ドラマや映画などのノベライズの場合、ノベライズをした人物の名前は表紙などにも表記されるだろう。にもかかわらず、本書は、物語が始まる前のページに小さく書かれているだけである。本書の著書はノベライズをした豊田美加であって、小松江里子はあくまで原作とか、原案とか、脚本とか、そういう表記が正しいのではないだろうか。なんとなく納得のいかない扱い方である。

 さて、肝心の内容はと言えば、まあ、普通のユーモアミステリと言って良いだろう。全体的に脚本調なのはとりあえず大目に見ることにする。

 しかし、第二話の事件はどうかと思う。公園に落とし穴を掘って、そこに傘の先を上に向けて無数に立てて置き、その場所に相手をおびき出して......。幅二メートル深さ三メートルの穴を誰にも気付かれずにどうやって掘ったのかも疑問だが、それ以上に、そんな大きな穴に誤って落ちる子供がいなかったことに驚嘆する。そもそも、そんな穴をどうやってカモフラージュしたのかも分からないし。それに、そこまで苦労しておいて(おそらくスコップで掘ったのだろう。三メートルも!一晩で?)、凶器が傘とは(しかも17本だけ)、ユーモアミステリにしてもちょっとひどいような気がする。ドラマの場合は大げさにしないといけないのかもしれないが、小説化する際にはもう少し考えてほしい。

 ちなみに、ユーモア部分はしっかり押さえられているので、細かいことを気にしなければ、十分に楽しめる。特に、専業主婦、小泉日向子と鑑識官とのやり取りは非常に面白い。おそらく、ドラマにおいても、見所の一つになっていたことだろう。

At 00:21 | コメント (0) | トラックバック (0) | ミステリ

『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信

春期限定いちごタルト事件

春期限定いちごタルト事件

米澤穂信
創元推理文庫 (2004/12/24)
609円(税込)

 小鳩君と小佐内さんは「小市民」を目指す高校一年生。二人は恋愛関係にあるわけでもないのに、いつも一緒にいる。二人で出かけることもしょっちゅうだ。逃げたい時の言い訳に互いが互いを利用し合う。二人はそういう関係なのだ。そんな不思議な交際を続ける二人の日常は微妙にどこかが歪んでいる。歪んだ日常の中で起こる事件はいたって普通。だけどやっぱり歪んでる?そして、二人は無事「小市民」になれるのか?

 いわゆる日常の謎派の作品と言って良いだろう。しかし、その日常はどことなくいびつである。その原因の一つは、主人公ふたりの抑圧された感情からくるのだと思う。解説でも述べられているように、この作品の中では心情描写が非常に少ない。それは、読者を惹きつけるためのテクニックというよりは、主人公たちの自主的な抑圧を表現しているのだろう。彼らは小市民を目指している。そのためには目立ってはいけない。だから、二人とも本当の自分を隠しながら生きている。それは決して苦痛ではなく、そう生きることが彼らの目標であり夢であるのだ。

 しかし、彼らの努力を邪魔するかのように、ふたりの前には次から次に謎が湧き上がる。本当は謎になんて関わりたくない。小市民たるもの、名探偵面をして謎解きを披露するのは断固として避けなくてはいけないのだから。

 そう思いつつも、なんだかんだで謎を解くことになってしまう。その時の葛藤はとても切実である。そして、読者はある疑問を抱く。どうして、彼らは小市民を目指すのか。なぜ、目立ってはいけないのか。そして、彼らの過去に何があったのか。読者にとっての謎は、彼らに提示された謎ではなく、彼ら自身なのである。

 この作品が新鮮で魅力的な理由はそこにある。主人公自体を最大の謎にしたところが面白いのだ。そして、その謎は少しずつ明らかになるが、完全に明かされることはない。しかし、読み終えた時は妙に納得してしまう。言葉にしなくても伝わる何かが行間に埋め込まれているのだろう。

 また、構成も大変良く出来ている。いわゆる連作短篇の形を取っており、五作の短篇が収録されているのだが、その連作短篇形式が非常に上手く生かされているのだ。連作短篇というのは、各短編での謎のほかに、シリーズ全体を貫く大きな謎があり、それが徐々に明らかになっていくことで、長篇にも匹敵するスケールを持ち得る形式である。しかし、最近は単純に主要な登場人物が共通で、事件の傾向が似ているというだけの場合が間々ある。

 本作の場合、第一話「羊の着ぐるみ」を読んだ段階では、少し変わった雰囲気があるというだけで、それほど魅力的でもないし、正直、凡作かと思ってしまった。ミステリの粗悪濫造が叫ばれている今時なので、あの創元推理文庫でもこの程度の作品を出版してしまうのかという、多少がっかりした気持ちになった。しかし、それは全くの読み違いであったのだ。

 続く第二話、第三話と読み進めていくうちに、この連作で見るべきなのは、先述したように、主人公ふたりの謎であり、また、そのふたりの特異な生き方の面白さなのだと気付かされた。

 そして、最終話にあたる「狐狼の心」で、とうとうふたりの秘密が明らかになり、そして、一話から四話までに仕組まれていた伏線に驚かされる。何と用意周到なことか。さらには、今までのほんわかとした雰囲気が一転してサスペンスに変わるという驚愕の展開である。この最終話のために、それまでの物語があったのだと言って良いだろう。それぐらい、最終話の衝撃は大きい。

 語り口も雰囲気も一見ライトなミステリだが、その実非常に鋭い作品であった。それはまさに、小鳩君と小佐内さんのようではないか。彼らが小市民としての外見を苦労して作り出しているように、この作品自体も、ライトミステリとしての外見を苦心の上で形作っているのであろう。そう考えると、この作品が非常に奥の深い傑作であることは揺るぎない事実であるように思うが、皆さんはどう思われるだろうか。

At 00:26 | コメント (207) | トラックバック (0) | ミステリ

『ロートレック荘事件』筒井康隆

ロートレック荘事件

ロートレック荘事件

筒井康隆
新潮文庫 (1995/02/01)
460円(税込)

 ある夏の終わり、ロートレックの作品に彩られた、瀟洒な洋館に青年たちと美しい娘たちが集まり、優雅なバカンスが始まった。しかし、そのバカンスは、二発の銃声によって打ち破られる。厳重な警戒にもかかわらず、次から次に殺されていく美女たち。果たして犯人は見つかるのか?そして、読者はトリックを見破ることができるか?奇才が紡ぎだした前人未踏のメタミステリがここに幕を開ける。

 大変な労作と言えよう。内容について述べることは出来ないが、とにかく緻密に構成された作品である。伏線とトリックが随所に仕掛けられており、最後の謎解きを読む際には、いちいち該当ページを確認したくなることだろう。

 そのように、とても丁寧に作られた労作であることは確かなのだが、ミステリとしての面白さという点では多少劣るように感じる。それは、作中に仕掛けられたトリックがアンフェアだという理由ではなく、犯人が明かされた時の驚きが小粒であったからだ。謎解き場面で指摘されたページを確認する時には驚きを感じるし、思わず笑みがこぼれてしまうこともある。だが、それは一種の確認作業のようで、小説を楽しむということとは少し異なる気がする。

 そのため、作品自体をもう少し短くしても良かったのではないかと思ってしまう。謎解きが長く、途中で確認作業に飽きてしまうのだ。謎解き部分はそれ以前の部分と照らし合わせてみることで魅力を放つのだが、照らし合わせずに読むと、それほど面白くないのである。

 つまり、犯人が明かされ、ある程度作中の仕掛けを確認してしまうと、その時点で作品としての面白さが終わってしまうということだ。だから、謎解き部の後半はあまり楽しめなくなると言って良いだろう。

 新鮮なミステリとしての魅力は十分に備えているので、一読の価値のある作品であることには違いない。しかし、誰にでも勧めたくなるような作品でもない。物語を楽しむというよりは、技巧を楽しむ作品なのだろう。その技巧に関しては、最大限の賛辞を贈りたい。

 なお、作中で言及されるロートレックの作品が挿絵のように挿入されているが、それらの作品がストーリーに連関しているかというと、そうとも言えないようだ。ロートレックの作品が挿入されているのは、簡単な画集としての魅力を加えるということなのだろうか。ロートレックの絵が好きな人は、ぱらぱらとめくってみても楽しめるかもしれない。

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『塩原殺人行』草野唯雄

塩原殺人行

塩原殺人行

草野唯雄
光文社文庫 (1988/09/20)
462円(税込)

 草野唯雄と言えば、ブックオフの「く」の棚で見かけることの多い作家である。本当は「そうのただお」だから、「そ」の棚にあるはずなのに。草野に限らずこういう間違いは不勉強なアルバイト店員のおかげで度々見られる。しっかりふりがなも振ってあるし、背の部分に「そ 1-9」って書いてあるのになぁ。

 現代のミステリファンにとってもあまりなじみのない名前であることは確かだから、仕方ない。だが、多くの作品を生み出したベテラン作家であることは確かだ。などと知った風なことを言っているが、私も本書が初めて読む草野作品であったりする。

 本書には、表題作の「塩原殺人行」の他に、「大東京午前二時」が収録されている。後者は、昭和42年の乱歩賞で最終選考に残った「失われた街」を圧縮・改稿し、雑誌『推理界』昭和43年2月号に掲載された作品だ。すなわち、40年近く前の作品ということになる。

 40年も前の作品となれば、古めかしく感じられるのは仕方ないだろう。まして、変化の激しい東京を舞台にしているのだから、その傾向はより強い。それを拭うことができないが、作品のスピード感は衰えていないと思う。

 冒頭は男女の放蕩のような雰囲気だが、それが女性の自殺騒動により、サスペンスに一転する展開が鮮やかだ。彼女は睡眠薬を飲んで、あるビルの一室に閉じこもる。同時に、その部屋のガス栓を開けたため、朝になりガスの元栓が開かれれば、確実に死へといたってしまう。彼女を助けるためにビルを飛び出した主人公は、焦りと酔いのために、車に轢かれ、病院の前に捨てられる。あのビルはどこだったのか。早く見つけなくては彼女が死んでしまう。こうして、時間制限サスペンスが始まるのである。

 期限までにビルを探し出さないといけないという設定が面白い。そして、そこに絡んでくる人々の思惑。刻々と迫りくる時間の中、わずかな手がかりを元に、少しづつビルへと近づいてゆく。警察の捜査が緩慢というか、回りくどい印象を受けるのが玉に瑕だが、サスペンスとどんでん返しは良くできているし、複数の視点が同時進行的に語られるのも効果的だ。推理小説という感じではないが、サスペンス小説としての出来は標準以上であろう。

 一方、表題作の「塩原殺人行」は「大東京午前二時」の半分程度の長さであるが、こちらは駄作だった。トリックが納得しがたいし、フェアでない。トリックに気付かせるための伏線を入れる余地は十分にあるにもかかわらず、それがないため、明かされた時に理不尽さを感じてしまう。犯行方法を明かすのが物語の中心というわけではないのだろうが、それにしても物足りない。後半からは(またも)時間制限サスペンスに移行するが、それほど緊迫感もなく魅力的とは言い難い。頭を使わずに読み進められるのがせめてもの救いか。

At 23:09 | コメント (0) | トラックバック (0) | ミステリ

『新版 ミステリーを書いてみませんか』斎藤栄

新版 ミステリーを書いてみませんか

新版 ミステリーを書いてみませんか

斎藤栄
集英社文庫 (1998/11/25)
520円(税込)

 1963年に「機密」で宝石中篇賞、1966年に「殺人の棋譜」で乱歩賞を受賞し、その後もタロット日美子シリーズなどで支持を得ている斎藤栄。本書は彼が書いたミステリー作法の指南書である。ミステリーそのものの定義や歴史から始まり、発想法、取材法、メモの取り方、トリック論など、具体的なテクニックが分かりやすく丁寧にまとめられている。また、著者のヒット作の執筆裏話なども織り込まれていて、作家志望者以外でも興味深く楽しめる一冊と言えよう。

 全体的に、作品ができるまでの過程が大変丁寧に書かれているので、とても面白い。特に題名の付け方に関する話は大変興味深かった。また、様式美を重んじるという日本の伝統的な考え方とミステリーとの関係についての指摘も大いに納得させられた。

 だが、著者が生み出したという「ストリック理論」については初耳である。ストーリー自体がトリックになっていて、ストーリーとトリックを分割できないような小説を「ストリック」と名付け、ミステリーは「ストリック」を重視すべきだというような意見だ。「この意見は私だけが提唱したもので、他の人は賛成していない」と書かれているが、私は妥当性のある意見だと思う。ただ、「ストリック」というのは「叙述トリック」とほとんど同じようなので、現代では格別新鮮な意見とは思えない。もっとも、これが提唱されたのは1968年に講談社より刊行された『虹の幻影』のあとがきの中だそうなので、当時は新鮮だったのかもしれない。

 作家志望者向けに書かれているというよりは、ミステリーを愛する人全般に向けてかかれているような気がする。それは、タイトルにも表れているのではないだろうか。『ミステリーを書いてみませんか』というのは、今までミステリーを書いたことのない人への呼びかけであろう。読むだけで満足している人に対して、書くのはもっと楽しいですよと声をかけてくれているのだ。事実、本書を読んでいるうちに、自分にも書けそうな気がしてくる。現実にはそんなに簡単なものではなかろうが。

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『嘘猫』浅暮三文

嘘猫

嘘猫

浅暮三文
光文社文庫 (2004/09/20)
500円(税込)

 1998年に『ダブ(エ)ストン街道』で第8回メフィスト賞を受賞し、デビューした著者の自伝的青春小説。デビュー前、大阪から上京し、東京の広告代理店で働き始めたアサグレ青年は、六畳一間の安下宿で一匹の野良猫と出会う。それは、愉快だけど時に切なく、そして不思議な共同生活の始まりだった。

 まず、表紙が良い。北谷しげひさによる猫のイラストが独特の雰囲気を醸しだしている。作品の内容に非常にあったイラストだと思う。

 内容はといえば、まず猫好きにはたまらない。猫を擬人化した表現がとても上手く、猫を飼っている人は大きくうなずくこと請け合いだ。一方で、猫の死も隠すことなく書かれており、綺麗事ばかりのつまらない作品とは一線を画している。一匹の猫が死んだ時の、作者の気持ち、悲しいの一言では言い表せないような気持ちがページから染み出してくるようで、こちらまで切なくなってしまう。しかし、作品全体としては、ユーモラスな雰囲気なので、とても気軽に楽しめる傑作と言えるだろう。

 自伝的小説なので、ほとんどの部分は作者の体験に基づいているのだろうが、本当に?と思ってしまう箇所も間々ある。そして、そのような部分がまた面白い。自伝エッセイではなく自伝的小説たるゆえんだと思う。

 幕の引き方も鮮やかで、読み終えて幸せな気分になるだけでなく、言いようのない哀愁が心に残り、良い本を読んだという充足感を与えてくれる。200ページ程度の短い作品であるが、中身は濃い作品なので、いろんな人に勧たいし、プレゼントとして贈りたい。そんな一冊だった。

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プロフィール
双条 光華
Sojo Koka

芸能界暴露本のおかげで道を誤り、いつのまにか男性アイドルウォッチャーに…。
新しいモノ・珍しいモノ・面白いモノが好き。読書はもっぱらミステリです。
カテゴリー
おことわり
このブログに書かれているのは、ひとつの考え・解釈です。すべてが真実であるかは分かりません。
文中にネタバレを含む際はその旨を表記するようにしています。
ただし、ドラマに関してはことわりなく書いている場合がありますので、視聴後にご覧ください。
なお、記事中では基本的に敬称略としています。
このブログの沿革
このブログは、双条光華が過去に運営してきたブログの記事ならびに当時頂いたコメントをすべて継承しています。(現在移行中のため、一部表示が乱れています)
2008/8~ エンタメ一刀両断!
2007/1~ 散在道中膝栗毛
2005/5~ ブログの輪舞
ちなみに、「偵乱密泡華」というのは昔のHNです。
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